メタバースの普及は、企業が新たなビジネス領域に参入するチャンスを生み出していますが、そこで得られるメリットには様々なものがあります。
具体的には、立体的な仮想世界の体験性を活かした顧客との接点の強化や、トークンを用いた独自の経済システムの構築、グローバル市場への参入など様々なものが挙げられます。
本記事では、企業がメタバースに参入することによって得られる様々なメリットや可能性、そして今後あり得る展開についても考察します。
企業がメタバース参入によって得られるメリットとは
メタバースは企業のビジネスにおいて新たなプラットフォームとして高い有効性があり、企業が競争力を強化して成長を促進する可能性を持っています。
こうした可能性を企業が引き出すためには具体的にどんな要素が重要になるのか？以下では、主に企業が顧客にもたらすメリットと、企業が得られるメリットの2つに分けて解説します。
体験性の向上と顧客との接点の深化
メタバースが顧客にもたらすメリットとして第一に挙げられるのが、仮想世界での解像度の高い体験性によるエンゲージメントの向上です。
そこから紐解いて、顧客とのより深い関係性の構築や、更にはグローバル市場への参入の容易さなどが挙げられます。以下で詳しく解説していきます。
顧客の体験性の向上
メタバースは仮想空間内での豊富なインタラクションと没入感の高い体験を提供し、SNSを始めとする従来のオンラインプラットフォームよりもより解像度の高い体験を提供します。
例えば、仮想空間でのイベントやアクティビティを通じて顧客との関係性を構築することが可能で、顧客は自身のアバターを通じて仮想世界を探索したり、他のユーザーと交流するなどが可能です。
一例を挙げると、ANAはメタバースを用いたバーチャル旅行プラットフォームを提供しており、仮想空間でデジタルアイテムの購入やスタッフとの交流ができるという内容です。
こうしたサービスは、単純な移動手段の提供者以上の体験を顧客に提供することになり、ひいてはそれが、下記で説明する顧客のエンゲージメント率の向上にもつながります。
顧客との深い関係構築
企業は、メタバースの特有の環境を活用して、顧客とのより体験的なブランドとの接触を可能にし、顧客エンゲージメントを向上させることが出来ます。
仮想空間内での体験は、そのブランドから得られる印象をより深めることになり、顧客にとって単なる情報提供だけでない新たな感動や体験を提供することが可能になります。
引用：https://www.borraginol.com/
こうした、より顧客の感性に直接訴えかけるブランディングは、顧客にそのブランドの強い印象を与えることになり、リピート率やそのブランドへの愛着への向上になります。
顧客はメタバース内での体験を通じて、企業とより直接的かつ体験的なコミュニケーションや世界観を体験することが可能で、それによって顧客とブランドとの関係を深めるのに役立ちます。
グローバル市場へのアクセス
メタバースは世界中の誰もが簡単にログインできるため、地理的な制約を超えてグローバルな市場へのアクセスを容易にします。
それが海外にもアピール可能なプラットフォームであれば、企業は世界中の顧客にアプローチするための新たな機会を得ることが出来ます。
これにより、新たな市場を開拓する機会が生まれ、グローバル市場での競争力を高めると同時に、より幅広い顧客にアプローチすることが可能になります。
グローバル化によって、企業の海外展開が以前よりも当たり前になった現在、メタバースへの参入はグローバル規模での事業展開をより効率的、かつ低コストで実現できる可能性が生まれます。
独自の経済システムの構築と新たな収益源
上記では、主に顧客との接点を通じて得られるメリットについて言及しましたが、メタバースから収益を得るためにはNFTや仮想通貨を活用したビジネス展開を視野に入れる必要があります。
以下では、メタバースや仮想経済を企業が有効活用するために必要となる秘訣について、重要なものを幾つかピックアップします。
NFTや仮想通貨を活用した仮想経済の可能性
企業がメタバースに参入することで、NFTや仮想通貨を活用した仮想経済の構築が可能になります。
既に社会に広く浸透したNFTは、デジタル媒体の所有権をブロックチェーンを用いて確立できるトークン技術で、メタバース内での取引や経済活動を支える決済手段として機能します。
NFTと独自トークンを用いることで、企業はメタバース内に独自の経済システムを構築することが可能になり、それによって、顧客がデジタルアイテムの購入や販売を容易に行うことができます。
他には、独自トークンを導入することで顧客のエンゲージメントを向上させることが挙げられますが、これに関しては以下で詳述します。
トークンを用いた独自の経済システムの構築
また、メタバース内で利用できるトークンを活用した独自の経済システムを構築することで、顧客との関係構築や収益率をより高める可能性が生まれます。
独自トークンを通じて特典や報酬を提供したり、独自のデジタル媒体の価値をより高めたりすることが可能になり、上手くいけば顧客はよりそのサービスに対して魅力を感じるかもしれません。
トークンに価値をもたらすために
現在、NFTゲームなどを中心に様々な独自トークンが発行されていますが、トークンは貨幣なので、それに価値がつかなければ貨幣としての機能を持ちません。
実際、多くのトークンが十分な価値を持てず、顧客はそのトークンの価値が上がる機会を待っている場合が多いのが実情ですが、独自トークンの価値を上げるためにはどうすべきなのでしょうか？
トークンの有用性を上げる
トークンは単に貨幣としての価値だけを持つのではなく、それによって特典や割引を提供したり、独自のサービスや製品へアクセス可能にする、などの方策が挙げられます。
それによってトークンの有用性が高まり、トークンの貨幣としての価値を底上げすることになります。それがそのトークンの貨幣としての価値をより底上げするきっかけになります。
一例を挙げると、日本のNOT A HOTEL株式会社が展開するNFTプロジェクトでは、独自トークンであるNAC（NOT A HOTEL COIN）を発行して様々な特典を提供しています。
引用：https://notahotel.com/shop/nasu/masterpiece
NACを保有していると、施設への宿泊権や報酬などの様々な特典が付与され、その独自トークンが単なる交換手段としての貨幣以上の価値を持つことになります。
市場での流通促進
トークンの機能性と同時に重要になるのが、そのトークンが市場で幅広く認知されて、より多くのトークンが流通することです。
例えば、トークンを取引所に流通させることで、より多くの人々がそのトークンの存在を知り、かつアクセスできる機会を提供することが可能になります。
現在では、ICO（Initial Coin Offering）を用いて、新規の独自トークンを公開して投資家から資金を調達する方法もあり、トークンの市場における環境はより改善されつつあると言えます。
信頼性と透明性の確保
最後に、トークンにおいて最も重要なのは信頼性と透明性です。トークンは貨幣としての価値を持つため、信頼によって価値が成り立つと言っても過言ではないでしょう。
トークンの価値を担保するために、企業はトークンの発行と管理に関する透明性を証明できる機会を提供することで、信頼性を高めるための努力を行うことが重要です。
また、不正アクセスや盗難などの違法行為を排除するため、高いセキュリティ性の確保や法的な規制に準拠しているかを証明することも大切です。
これらの戦略を組み合わせることで、企業が発行した独自トークンが市場で価値を得るための努力を最大限に活かすことができます。
今後の展望
メタバースの発展は着実に進行しており、現在も様々なプラットフォームが生まれており、これからも更に多くの企業が参入することが確実視されます。
メタバースの世界はある意味で循環がとても早く、とあるプラットフォームが知名度を得ても、すぐその後に別のプラットフォームが台頭してその領域を占有することは日常茶飯事です。
特に、現在はVRやAI技術の進化によって、現在はまだ存在しない全く新しいメタバース環境を提供する企業が現れる環境も整っています。
メタバース体験はよりパーソナルなものになる
特に、AI技術の進化により、メタバースでの顧客体験はよりパーソナライズされたものになる可能性があり、例えば顧客の行動や嗜好に基づいた個別最適化された広告やサービス提供が可能になります。
こうした仕組みは既にAmazonやNetflixで利用されていますが、それによって顧客満足度の向上につながるだけでなく、メタバースでの仮想体験により没入する要因にもなります。
もしくは、VRヘッドセットに対応することで体験性をより高める、もしくはAR技術によってメタバースの仮想世界を現実世界と地続きなものにするサービスも今後実現すると予測されます。
これらは可能性の一部ですが、日進月歩で更新されるメタバースの世界だからこそ、参入するのに早い、遅いの差はなく、技術力と構想力のある企業には常に門戸が開かれている領域なのです。
結論
メタバースへの参入は、企業にとって多くのメリットをもたらす可能性があり、体験性の高さを活かした顧客との接点強化、独自の経済システムの構築など、重要なポイントが数多くあります。
更に、AIやVR/AR技術の進化によって、メタバースの体験性は今後更に向上し、加えて仮想経済の浸透によって企業にとって新たな収益源となる分野になります。
これらのメリットを最大限に活かすための戦略や取り組みは、メタバースの発展と共に、今後更に求められていくでしょう。
