最近では巷の様々な場所で、従来の中央集権的な構造から脱したインターネットの新しい形態であるWeb3.0(Web3)について触れる機会が増えてきました。
そんなWeb3.0の時代において新たに注目されているのが、ブロックチェーン技術に基づいた分散型ソーシャルメディアで、日本国内でも徐々にユーザーが増えています。
分散型ソーシャルメディアは、X(Twitter)やFacebookなどの既存の中央集権的なプラットフォームとは異なり、ユーザー自身がプラットフォームの管理に参加し、かつ活動から報酬を得ることが可能になるなど、従来とは大きく異なる特徴があります。
この記事では、分散型ソーシャルメディアの特徴や国内で利用可能なプラットフォームを紹介すると共に、その法的課題や社会的影響にも焦点を当てます。
Web3.0によって誕生した分散型ソーシャルメディアとは
従来のソーシャルメディアは、ユーザーのデータを中央集権的に管理し、プラットフォーム側が利益を得る構造であり、この仕組みはWeb2.0と呼ばれていました。
しかし、Web3.0ではブロックチェーン技術と仮想通貨の組み合わせにより、ユーザーが自身のデータを管理し、プラットフォーム上での活動に対して報酬が得られるという点が新規的です。
そもそもWeb3.0とは何なのか?
Web3.0は、インターネットの新しい形態を指す用語であり、中央集権的なWeb2.0の次に来る新しい概念として知られています。
従来のWebは、情報をサーバーやプラットフォームで中央的に管理していましたが、Web3.0では分散型のブロックチェーン技術を活用して、データやアプリケーションをプラットフォームによる中央集権的な管理から解放します。
これによって、ユーザーによるデータの自律的な分散管理が可能になり、ユーザーが自身のデータに対して完全な所有権を持つなど、よりユーザー個人への個別最適性が向上した新しいプラットフォームの構築が可能になります。
分散型ソーシャルメディアのメリット
このような特徴を持つWeb3.0を基盤にした分散型ソーシャルメディアの長所を、既存のWeb2.0基盤のソーシャルメディアと比較すると以下が挙げられます。
- 特定の事業者に依存しないので、事業撤退などの事業者の都合にユーザーが影響されない。
- セキュリティやプライバシーに関する決定権がユーザー側に委ねられるなど、ユーザーの自由度が増す。
- データ管理を民主的に行えるため、ユーザーのプライバシーが重視される。
このように、プラットフォームが中央集権性から脱することで、従来よりも言論の自由が確保されやすくなる、仮想通貨との親和性が高いため投稿の収益化がしやすいなどの利益が挙げられます。
分散型ソーシャルメディアのデメリット
一方で、分散型ソーシャルメディアを利用する際のデメリットとしては下記のようなものがあります。
- 投稿の際にガス代が発生するなど、一定の費用がかかる。
- セキュリティリスクを分散できる一方で、サーバーによってはリスクが存在する場合もある。
- セキュリティやプライバシーがユーザー側に委ねられるため、情報管理やプライバシー保護に関する責任もユーザー側に委ねられる。
下記で説明する各種分散型ソーシャルメディアでは、プラットフォームによって規則や特徴が異なるため、事前にきちんと情報収集をする必要があります。
分散型ソーシャルメディアで収益を得るには
上述の通り、Web3.0を基盤にした分散型ソーシャルメディアは、ユーザーが自身のデータを管理し、活動に対して報酬を得る新たな仕組みを提供しています。
この新たなアプローチにより、従来の中央集権的なプラットフォームに縛られることなく、ユーザーは自身のコンテンツや活動に対してより公正な報酬を受け取ることが可能になります。
日本で分散型ソーシャルメディアで利用できる?
ブロックチェーンを用いたサービスの多くが海外発ですが、下記で紹介する分散型ソーシャルメディアのように、幾つかのプラットフォームは日本語で利用できます。
海外プラットフォームのため完全に日本語に対応している訳ではない場合もありますが、日本語での投稿やコミュニケーションは可能な場合が多いです。
分散型プラットフォームはまだ国内では余り認知されていませんが、徐々に国内ユーザーも増えている現状を鑑みると、今のうちに始めてユーザー間のネットワークを構築すべき時だとも言えます。
なぜ分散型ソーシャルメディアで収益を得られる?
分散型ソーシャルメディアで収益を得られる理由は、ブロックチェーン技術や仮想通貨を活用した新しい収益モデルにあります。
具体的には、広告収益やコンテンツの販売、トークンによる報酬など、様々な収益モデルが存在し、ユーザーは自身の貢献に応じて報酬を得ることができます。
投稿したコンテンツや参加したコミュニティを通じて報酬を得ることを前提にしているプラットフォームであれば、従来の中央集権的なプラットフォームに比べて、収益の公平性や透明性が高まります。
分散型ソーシャルメディアで利益を得るにはどうすればいい?
分散型ソーシャルメディアで収益を得るためには、まずプラットフォームに登録し、自身のコンテンツを投稿することから始めます。
その後、コンテンツの品質や人気に応じて報酬を得るための仕組みに参加します。例えば、トークンによる報酬を受け取る、広告収益を受け取る、コンテンツを販売するなど、さまざまな方法があります。
分散型ソーシャルメディアの事例とその収益システムについて
下記では、日本国内でも利用可能な分散型ソーシャルメディアの事例を紹介しつつ、新たな収益システムがどのように機能するかを説明します。
ブロックチェーン技術と仮想通貨を活用し、ユーザーが自身のデータや活動に対して報酬を得る仕組みを具体的に示していきます。
日本国内でも利用可能な分散型ソーシャルメディアの例
分散型ソーシャルメディアの大半は海外プラットフォームですが、日本国内でも利用可能な分散型ソーシャルメディアは幾つかあります。
以下で紹介するプラットフォームは、日本国内のユーザーにもアクセス可能であり、分散型ソーシャルメディアのメリットを生かしたコミュニケーションや情報共有が可能です。
Minds
Mindsは、ユーザーがコンテンツを共有し、他のユーザーと交流することでトークンを獲得できる分散型ソーシャルメディアプラットフォームで、アプリ経由で利用する点が特徴的です。
筆者もMindsをスマホにインストールして使ってみましたが、まずスマホアプリなので操作が手軽なものの、ユーザーの大半は海外で日本人ユーザーはまだ殆どいない様子です。
ユーザーは、自身の投稿に対する反応や広告収益の一部を受け取ることが可能で、プラットフォームは日本語にも対応しています。
ユーザーは日本語での投稿やコメントを行うことが可能で、また、ユーザーインターフェースも日本語に切り替えることが可能です。
LBRY
LBRYは、動画や音楽、書籍などのデジタルコンテンツを共有し、それに対してLBRYクレジットと呼ばれるトークンを獲得できる分散型ソーシャルメディアプラットフォームです。
基本的にはアプリ操作で行うのが特徴で、macOS、Windows、Linux、iOS、Androidなど各種OSに対応しており、インストールして利用します。
LBRYは現在、ユーザーインターフェースが日本語に完全に対応しているわけではありませんが、日本語のコンテンツの投稿や閲覧は可能です。
また、多言語のコンテンツをサポートしており、日本語のコンテンツも充実していますが、プラットフォーム全体が日本語に対応しているわけではないので留意しましょう。
Hive Social
Hive Socialは分散型のソーシャルメディアおよびブログプラットフォームで、ユーザーはコンテンツの作成、投稿、コメント、投票などを行い、その活動に対して報酬を受け取ることが可能です。
投稿できるのは画像、動画、文章など他のソーシャルメディアと同じですが、どちらかというと画像、映像などの視覚的な要素を重視しており、TumblrやPinterestと似た感じです。
Hiveは多言語をサポートしており、日本語でも利用可能です。一部のコンテンツやユーザーインターフェースが英語である場合もありますが、基本的な機能は日本語で利用できます。
Memo.cash
Memo.cashはビットコインのブロックチェーン上に構築された分散型のソーシャルメディアプラットフォームで、簡素なUIが特徴です。
所感として、ブログというよりもX(Twitter)のような短文投稿がメインで、他の分散型ソーシャルメディアと同様に日本人のユーザーはまだ殆どいないようでした。
多くの分散型ソーシャルメディアの主要言語は英語ですが、日本人ユーザーがまだ極めて少ないため、投稿する際は英語を用いる方がお勧めだと感じました。
英語が苦手な方でも、現在はDeepL翻訳などのAI翻訳を利用すれば流暢な英語を生成できるので、発信する内容が明確であればそれほど敷居は高くないと言えます。
法的課題と社会的影響
一方で、分散型ソーシャルメディアの台頭には様々な法的課題や社会的影響が懸念されます。
例えば、データの管理がユーザー自身に委ねられるため、プライバシーやセキュリティの問題が浮上する可能性が否めません。
また、報酬を得るための競争が激化することで、コンテンツの質が低下する可能性もあり、生成AIによってコンテンツ制作が簡単になった昨今では特に懸念されます。
さらに、分散型ソーシャルメディアが従来の中央集権的なプラットフォームを置き換えることで、情報の信頼性やコミュニケーションの安定性に影響を与える可能性も考えられます。
結論
Web3.0やブロックチェーン技術の進化により、分散型ソーシャルメディアは従来のデジタル経済に新たな風穴を開けるものとして期待されており、日本国内でも徐々に注目を集めています。
ユーザーが自身のデータを管理し、活動に対する報酬が得られるという仕組みは、インターネット上の新たな経済圏を構築する可能性を秘めています。
同時に、発生し得る様々な法的課題や社会的影響を考慮する必要があり、管理がユーザー側に委ねられる分散型ソーシャルメディアの発展にはユーザー個々人のコミットメントが求められます。