メタバース

ドラクエ10 オンラインってメタバースなのか?

メタバース

 メタバースの定義は人それぞれ。「多人数が参加可能で、参加者がその中で自由に行動できる、通信ネットワーク上に作成された仮想空間のことである」と言われているので、仮想空間でコミュニケーションができればメタバースなんだろうなと。

 オンラインゲームはメタバースと言えるのか?っていう議論はいっぱいあるので、今回はそういうのはおいといて、ドラクエ10オンラインをやってたら「こういうことね」って感じたことを紹介します。個人的な感想が多いですのでご参考までに。

ドラクエ10オンラインっていつからあるのか?

 ドラクエ10オンラインの歴史はかなり長いです。2012年8月2日発売なので、2024年現在ですでに12年。メタバースという語源は、ニール・スティーヴンスンさんが1992年ぐらいに作ったらしいですが、日本の企業がバーチャル空間として注目し始めたのは2021年以降らしい(Wikipediaより)

 オンラインゲームとしては、1997年のウルティマオンラインが最初と言われているので、ドラクエが特段早いって訳ではないです。なお、ファイナルファンタジーオンラインは2013年8月27日発売だそうです。

ゲーム内でプレイヤー同士が会える(コミュニケーション)

 私はあまりゲームはしないんですが、ドラクエだけはやってます。幼いときに植え付けられた習慣のようですね。習慣とは恐ろしい。

 発売当初から存在は知ってたのですが、引っ込み思案の私は、「えー、オンラインってみんなと一緒に冒険するんでしょ?」って思って手が出せませんでした。発売から8年もグズグズしていた訳ですが、2020年ごろにドラクエ10オンラインを初めてプレイしたときは、ゲームの進行以外にも他のプレイヤーとのコミュニケーションが多くて驚きました。オンラインゲームが初めてだったので、ファンタジー世界ってこういう感じなんだって思いました。異世界に転生した気分

武器を自分で作って売る(NFT)

 今までのドラクエって、武器は用意されたものを買う。っていうのが常識でした。どこの武器屋で買っても「銅のつるぎ」は100Gで攻撃力は12。売り切れる心配もない。どれだけ使っても買値の半額で下取りしてくれる。優しい世界。

 でも、ドラクエ10 オンラインでは、自分が武器職人になって武器を作れる。自由な発想で新しい武器を開発できる訳ではないですが、出来栄えによって攻撃力も特殊効果も様々なので、自分で値段を設定してバザーで他のプレイヤーに売ることができます。中古は売れません。厳しい世界。

 しかも、自分で作った武器を他のプレイヤーが購入して使ってくれることで、職人としての評価があがる(ロイヤリティを得る)システム。ドラクエ内通貨のゴールド(G)は日本円に換金することは出来ないけど、ゲーム内ではゴールドを稼いで買うという経済が生まれています。

 こつこつと職人クエストをこなしていくと、職人レベルが上がります。現実世界ではどれだけ努力しても「才能」によって最高到達点は異なりますが、ドラクエの世界なら、どんなに手先の不器用なおじさんでも一流のクリエイターになることが出来るのです。夢があるなぁ。

武器をバザーで販売(マーケットプレイス)

 武器職人以外にも裁縫職人やランプ職人、料理人など色々な職業があってお互いに協力し合ってより良い商品を作っていく社会が形成されています。

 今までのドラクエってモンスターを倒して金を稼ぐ以外になかったので、これはすごいことです。冒険に出なくても職人としてドラクエの世界で食っていける(ほんとのおなかは満たされません)

 自分で作った武器をバザーで売ることが出来るだけでなく、購入した武器に新たな付加価値をつけてバザーで再販することもできます。武器の流通量によって相場も変動します。

 中古は売れないというシステムがあるので、相場が極端に崩れることはなさそうです。こういうところはゲームっぽく管理されているので安心ですね。平和な世界。

武器に履歴が残る(ブロックチェーン台帳)

 手に入れた武器はどこで誰から買ったかの履歴が残ります。技術的な要素は全く違うけど、台帳って意味ではブロックチェーンっぽい仕組み。

 ただし、武器を捨てたりするとその履歴ごと消えちゃいます。履歴が残ってるだけなので、ブロックチェーン台帳というのはちょっと無理があるかも知れませんね。

敵を倒してゴールドを得る(マイニング)

 ドラクエ内で流通するゴールドは敵を倒して得ることが出来ます。敵を倒したときに得るゴールドは誰かが支払ってる訳ではありません。つまり、敵を倒し続けることでゲーム内の通貨の総量が増えます。これは、コンピュータリソースを提供する代わりに対価を得るマイニングと同じ仕組みと言えます。

キャラクターの着せ替え(アバター)

 キャラクターの装備によって見栄えが変わります。残念ながら、装備のデザインをプレイヤーが作ることは出来ません。VRMとかブレンダーで作ったものを売れるようになったら楽しいかも知れませんが、ゲームのバランスが崩れそうです。

 ドラクエ10で作ったアバターをファイナルファンタジーで使えるようになればいいんですが、それも難しいでしょうね。この辺りはClusterやVRChatのようなメタバースプラットフォームの方が得意だと思われます。

プレイヤーの世論がある程度反映される(DAO)

 ドラクエ10オンラインでは、プレイヤーの世論(トレンド)が運営やアップデートにある程度影響を及ぼしているように感じます。高レベルプレイヤーの声は大きいので、貢献度に合わせた発言権があると言えます。Web3.0でいうところのDAO(分散型自立組織)に近いですが、あくまでも「意見として参考にする」レベルですので、DAOのように「自動的に」とか「決定権」というものではありません。

運営は営利企業

 メタバースかどうか。という点ではメタバースの定義を満たしていると言えそうです。でも、Web3.0的な要素はどうか?と考えると難しいですね。NFTっぽい要素やアイテム台帳、ゴールドで流通している経済。でも、「ドラクエ10の世界はスクエアエニックスが仕切っている」ので企業の判断でサービスが終了してしまうかも知れません。

 Web3.0は、「特定の企業に依存しない分散型インターネットの総称」と言われていますので、「スクエアエニックス」という特定の企業に依存しているので、Web3.0とは言えません。

 そもそも基盤の技術は「みんながちょっとずつコンピュータリソースを持ち寄って作る元気玉のようなブロックチェーンではなく、スクエアエニックスがお金を出して管理しているサーバ」だと思いますので、技術的にもWeb3.0と呼べません。

メタバースとWeb3.0の違い

 メタバースとWeb3.0が一緒に語られるケースが多いですが、ドラクエ10オンラインの世界をみるとメタバースとWeb3.0の違いが見えてきます。

 さて、ドラクエ10 オンラインの世界で何を目指そうかな。最強を目指すのか、職人を目指すのか。他のプレイヤーとコミュニケーションを取りながらゆっくり過ごすのもいいですね。なんでもできるオープンワールドの世界っていうのが、メタバースの本質なのかも知れないですね。

 適度に魔王がせめて来たり、乗り越えられるぐらいの試練がきたりで楽しく刺激的にデザインされた世界です。

書いた人
タニー二

京都高度技術研究所 研究開発本部でインフラ業務に携わっています。メタバースの研究と称して色々なガジェットやプラットフォームで遊んで学んだことを情報発信していきたいです。

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