「メタバース進化論」は「バーチャル美少女ねむ」さんの書籍です。「仮想現実の荒野に芽吹く「解放」と「創造」の新世界」の副題のとおり、メタバース「原住民」たちのリアルを記された本です。Facebookの社名変更から始まったメタバースへの大きな注目の前から活動している先達の記録です。正直、いささか言い過ぎじゃないか? と思いもしましたが、でもそれだけの実感をもって活動している人々がいるのだという事が記されています。
それ何の意味があるの?
社内体験会で聞かれる問いです。オンライン会議だったらzoomで良い。ビジネスで何が生まれるのだろうか? と言われると、私も実は答えを持ち合わせていません。zoomはコロナで仕方なく使うものだったと思うのですが、いつのまにか「オンラインで良いよね」となり、外出の機会が大きく減りました。でもメタバースだって気がついたら「じゃあメタバースで」となるのではないか? と、思っていました。メタバースじゃないと得られない臨場感や近くに居る感覚がきっと意味を生むだろうと。
でも、正直なところ今のところそれほど「意味はない」と思っています。使っている内に、気がついたら広がって「必需品になっている」と思っています。AppleやGoogleがいつの間にか全てを握っているなんて、スマホが生まれた十数年前誰が思っていたでしょうか? この本は、詰まるところ一般からしたら「それやらなきゃいけないの?」と思えることをやっている人達の記録です。
どんな事が書いてあるか?
メタバースってそういうものなのか! と理解を深められます。所謂定義からはじまって、様々なメタバースの紹介、技術の紹介、そして本書のもっとも特徴的な「コミュニケーションのコスプレ」の話題です。私が印象的だった内容をちょっとご紹介します。(私の感想が混じっています)
なりたい自分になる
中身はおじさんかもしれない。そこはもう問題じゃない。みんな美少女・美少年になっていい。それがメタバース。著者が実施した「ソーシャルVR国勢調査」によれば90%が男性ユーザーで、内80%のユーザーが女性アバターを使っているようです。異世界転生に現世の色々を持ち込まなくたっていい。別人になって過ごしたらいい。猫耳などの亜人種も人気だそうです。しかもボイスチェンジャーなんか使わなくてもいい。カワイイは正義。アイコンなんです。私のような無言勢はわずか8%だそうです。
飲み会もする
ヘッドセットをしながら、おつまみを食べながら飲むらしいです。無理筋です。絶対こぼします。パック酒オンリーだったとしたらそれはそれで超酔いそうです。
接触を感じられるようになる
ファントムセンス(VR感覚)というものが生まれるらしいです。「視覚」「聴覚」以外の感覚を感じることができるようになるそうです。ヘッドセットを被った人ならわかりますよね? 「移動」「落下」です。あの、酔うやつです。さらに「温度」「風」「味覚」「嗅覚」「触覚」も感じるようになるそうです。「感覚を生やす」と言うそうです。ガンダムで言うところの「ニュータイプ」に近いかもしれません。
恋愛もする
恋人のことは「お砂糖」と言うそうです。物理性別は気にせず、内面で選ぶそうです。別れたときは「お塩」というそうです。こういった文化はオンラインゲーム時代からありました。もう20年以上前、私もオンラインゲームで遊んでいたころ、キャラ同士での結婚式出席したこともありましたが、しかしその頃はまだ物理性別からの解放までの意識はなく、ネカマと呼ばれる人々はとにかく演じきる(気づかれない)ことを要求されていました(バレたら嫌がられる)。時代は変わったんだなぁと、思わずにはいられません。
社会としてのメタバースを感じる一冊
メタバースで生活している人々がいるらしい。そう感じることができる1冊です。まだ踏み込み切れていない人からすると結局のところ「その意味」「活用法」などなど、色々考え込んでしまうのですが、そんなものはアクセスする前の感覚です。そこに入って活動すれば、それはいずれ「生活の場」となり「ビジネスの場」となっていく。先達の記録を見るとそう思えます。
私も美少女になってボイスチャット出来るようになるかなぁ。