本ブログでも何度か上がってくる「PLATEAU」をはじめとした、3D地図とはいったいどんなものなのか? 基礎的な話をまとめておきます。
3D地図ってなに?
みなさんがもっとも触ったことがあるのは恐らく、Googleearthではないでしょうか? ちなみにSteamでも配信されており、VRスコープで世界中の空を飛び回ることができます。つまり、地上の様子を立体的なデータで表現したものです。
3D地図とは、平面の地図情報に標高データを加えて、立体化した地図のことです。
これまで、模型で作成された立体地図はありましたが、作成に時間と手間がかかる上、変更することが困難であるというのが難点でした。
近年のIT技術の躍進と航空レーザー測量により、地表を数センチの精度で読み取って画像化することが簡単になり、3D地図がインターネットで配信されることにより、広く知られるようになりました。
例えば、米国Google社のソフト「GoogleEarth」が、一般で活用されている3D地図の代表的なものです。
BizXaas Map
PLATEAUってなに?
他の記事でも扱われているオープンデータ地図「PLATEAU(プラトー)」は国土交通省の主導の下、3D都市モデル整備・活用・オープンデータ化プロジェクトです。そもそもなんでPLATEAUなんですか? というと「「フランス人哲学者のジル・ドゥルーズと精神分析家フェリックス・ガタリの著書「千のプラトー|Mille PLATEAUx」」に由来します。
ドゥルーズとガタリによる最大の挑戦にして未だ読み解かれることない比類なき名著。リゾーム、アレンジメント、抽象機械、リトルネロ、戦争機械など新たな概念を創造しつつ、大地と宇宙をつらぬいて生を解き放つ多様体の思考。器官なき身体/存立平面から“機械圏”へ―来たるべき民衆のための巨大な震源。
「BOOK」データベースより
難しい事を書いていますが、直接的な地図の話ではないのです。尚、PLATEAUとは「台地を意味するフランス語」だそうです。知ったかぶりをするときは「PLATEAUとは台地と言う意味のフランス語なんですが、単にそれだけではなくドゥルーズとガタリの「千のプラトー」に由来した名前なんですよ」と言えば若干のマウントが取れる可能性があります。
データの更新は各地方公共団体
PLATEAUのデータの更新は地方公共団体が実施しています。全国のデータがあるわけではなく、徐々に整備が行われていきます。
PLATEAUの3D都市モデルは地方公共団体が定期的に取得する航空写真等のデータをもとに作成しています。更新頻度は地域によって様々ですが、概ね1年~5年の範囲内で更新されることが一般的です。
PLATEAU FAQ
2027年度までに約500都市に拡大することを目指しています。その後も整備範囲の拡大を進めていきます。
PLATEAU FAQ
LOD
各データのレベルはLOD(Level of Detail(細かさの度合い))で示されます。(全部の都市が同じレベルではないということです)
LODレベル | 表現レベル |
---|---|
LOD0 | 2次元の建物形状を定義 |
LOD1 | 2次元の建物形状に高さを付与した3次元の定義 |
LOD2 | 建物の屋根を定義 |
LOD3 | 建物の窓やドア等の外部の詳細を定義 |
LOD4 | 建物の内部を定義 |
たとえば京都市の下京区だと、LOD2でテクスチャもあるモデルが提供されています。東京都の「東京ポートシティ竹芝」ではLOD4が提供されています。
PLATEAU View を見てみよう
モデルデータは様々に使う事ができ、たとえばメタバースのワールドとしても利用出来ます。Webから見る事もできますので、まずはWebから見てみましょう。
建物モデル毎に詳細な情報を持っています。
LOD2もテクスチャ無しだと豆腐モデルです。
市販の3D地図
これだけデータがあったら、市販の3D地図要らないよね? と言うことになりそうですが、XR総合展の時に「ゼンリン」さんにお話しを伺うことが出来ましたので、ゼンリンさんの3D地図をご紹介します。細かい案内はWebで見て頂いたら良いと思いますが、PLATEAUとの違いを中心に、印象的だったお話しをピックアップします。
空から撮るか、陸から撮るか?
撮影・計測方法の方法の違いが地図そのものの特徴に現れます。
名称 | 計測方法 | 道路の表現 | 高さの表現 | 道路からアクセス出来ないところ |
---|---|---|---|---|
PLATEAU | 空撮 | 苦手 | 正確 | 表現できる |
ゼンリン3D地図 | 車両 | 正確 | 建物の階数で概算 | 表現できない |
空からなら、京都だと京都御所や東西の本願寺は撮れるけど、陸からだと撮れない。空から陰になるような例えば陸橋の下の道路は撮れないけど、陸からなら撮れる。
3Dデータだとデジタルツインやコモングラウンド、メタバースなど……色々な用途が想定されますが「PLATEAUだけ」「ゼンリン3D地図だけ」では実現出来ないことになります。
更新頻度
更新頻度、前段で説明しましたがPLATEAUは「1年〜5年」とされています。ゼンリンさんは「1年」です。5年前の地図だと怪しいところも大いにありそうです。
合わせ技で
道路は市販の地図、高さはPLATEAUのような合わせ技を使うのが、今のところの正解のようです。私が数年前に係わった案件でも、PLATEAUの建物の形状地図と陸上からLiDARセンサーで撮影したモデルを組み合わせARによる情報提供機能の開発を行いました。
とはいえ、広大な都市の3D地図データが無料で使えるというのは、ちょっと前には考えられなかったことです。工夫次第で大きく活用が進みそうです。